「まぁ、ええがな」

先日、デュッセルドルフの、
日本食材屋(アジア食材屋かな?)に行った。

その食材屋さんの奥に、日本の古本コーナーがあると聞いたからだ。
この都市には日本の新品書籍を扱う本屋さんも2軒ある。
ドイツなのに、すごいことです。有名な日本街です。

で、新品本屋さんに最初行ったのですが、どれも3倍以上の値段です。
とてもじゃないけど、買えない。
ドイツ語の勉強の本(CD付き)を探しに行ったのですが、とても高い。

で、上記の古本屋の事を思い出したのです。
お!安い!
今、興味のある橋本治さんの本もあります。
司馬遼太郎さんの本もあります。

しかし、安いと言っても、そんなにお金は使えません。
で、まず、ドイツ語の本を8ユーロ。
で、中沢新一さんの雪片曲線論の文庫本を3.5ユーロ。
で、森村泰昌さんの「まぁ、ええがな」のこころ。を5ユーロ。
で、買いました。最後の森村さんの本はハードカバーで、
その時はハードカバーの安売りがされていて5ユーロでした。

ドイツに来てから、やっぱり時間があるので、
物思いに耽る時間も増えました。で、色々考えているのですが、
その参考になるような書籍も読みたいなー。と思うようになりました。
ドイツ語は読めませんし、日本語の本が欲しいと思ったのです。

そして、上記本の選択の理由は、ドイツに来てからの
僕の精神状態、考え方の少しの変化によります。

中沢新一さんの本は、そんなに読んでいないのに、
凄く拒絶反応が出て、大嫌いでした。
なんか、当たり前の事しか書いていないと思ったからでした。
当たり前の事っていうのは、考え方や、思想などが、
正統な、王道な、何ら僕に面白みのナイ内容だったからです。

こんな偉そうな事を書いて、僕は何様だ?という感じなんだけど、
そう思ったんだから仕方がない。分かりきった事を書くなぁー。と
思ったのです。それを特別な事のように、発見したように、
書くのが好きでは無かったのです。

では、何故、ドイツで中沢新一さんの本を、また手にとったのか?
これも、最近ドイツに来てから読むようになったのですが、
ほぼ日刊イトイ新聞という、コピーライターの糸井重里さんが
作っているサイトがあります。非常に有名なサイトです。

そこで、すみませんが、誰かは、忘れたのですが、
中沢新一さんの事を褒めていたのです。
彼は、人間の本質を知る為に、探究する為に、昔から変わらぬ
チベット密教に、実際に入って、体験して、研究している。
それは、すごい事だ。というような事を、その方がおっしゃっていたのです。

で、それが僕の心に響きました。
何故、響いたかと言うと、ドイツに実際に来て、色々と知ったからです。
すごく漠然としたドイツのイメージを持って来ましたが、
それとは全然違う異国がありました。
外人の僕にとっては大変苦しい、居心地の悪いものでした。

ドイツと相性のあう日本人や、
ドイツと合わないけども頑張っている日本人の皆さんと、会うと、
何とも自分の反応が子供だなー。とか、努力が足りんなー。と思うのですが。

ほぼ日で読んだその言葉「体験していない事は学べない」という事に
大変共感しました。実際に体験したリアルな生な感覚は頭での物事ではない
物凄い影響があるのです。実際にドイツで今、生の体験をしています。
なので、その言葉の重みが、本当によく判りました。

で、その中沢さんの本を読みたくなったのです。
頭でではなく、できるだけ体で読みたいなー、というわけです。

森村さんの本は、何故買ったのかと言うと、
タイトルが物凄く気になっていたからです。
ドイツに来てから凄く思い出して仕方がなかったんです。
で、出会ってしまいました。
で、森村さんの本は、もう最後まで読みました。

まぁ、ええがな。
この気持ち、考え方、今の僕にはリアルに共感できます。
何故かと言うと、これもドイツでの変化からです。

今、僕はドイツとの相性は良くありません。
日本の方が断然イイ!と思っています。
で、ドイツの嫌いな所は諦めていました。もう仕方ないと。
怒りながらです。

でも、森村さんの、まあ、ええがな。
が僕には思い出されて仕方なかったんです。
雨が降っても、空に向かって怒っているような人です、僕は。
だけども、怒ったってどうしようもナイ事も勿論知ってます。
でも、怒っています。

で、雨が降る事と、ドイツという環境は、同じなのです。
雨が降ったら仕方ない。傘でもさすか。ってのと、
ドイツのルーズなペースが合わない。でも、慌てさせる事は不可能。
だったら、待つしかないか。と思うようになって来たのです。

多分、慣れです。

そして、諦めと思っていました。

でも、多分、僕の今のドイツへの心境は、「まぁ、イイか」です。

環境が整備されていないと生き難いのは当たり前です。
で、異国です。当たり前、ドイツはドイツ人達の為に整備されています。
それでも、ドイツ人が怒ってるって事もありますけどもね。
役所の仕事の怠慢さ、なんかは。
でも、ドイツ人の皆さんは、「まぁ、ええがな」と思っているようなのです。

本当に、呆れますが、
それも、「まぁ、イイか」と思えるようにもなったのです。
なんとも、まぁ。

しかし、まだまだ、頭で判っているぐらいなんで、
これから、「まぁ、ええがな」を体で判っていくことになると思うのです。 「まぁ、ええがな」なので、慌てませんけども。