「友達クリフと」 めずらしく家の電話が鳴る。 時々、相棒の修行仲間から電話があるので てっきり、そうだと思った。 相棒が「ハロー」と出る。相棒が慌てている。 何だろ?すると、相棒が「クリフから」と 笑って電話を渡してくれた。 イギリス人のクラスメイト、クリフだ。 クリフに数回電話したが出ないし 留守電にも2回程メッセージを入れたが 返事もくれないし、学校にも来ないので 僕は心配していたのだ。 (番号を間違えて全然違う人にも1回留守電を入れた。 その後、もう一回間違えて同じ人にかけ、その知らない彼は 出てくれたのだが、僕が「Ich bin Toshitsugu Miyashita」 と名乗ると、凄く笑って「OK,OK〜」と言って切った。) 学校では、先生も心配していた。 最近は、帰り際に「クリフから連絡あった?」 というのが先生と僕の会話だった。 クリフは電話ごしの挨拶もほどほどに 「今晩、一緒に夕食を食べないか?」と言うので、 僕は相棒に了解も得ずに「オッケイ」と言った。 で、クリフは僕の家までの道を覚えていないようなので クリフも知っていると前に言っていた近所の スーパーで夜9時に待ち合わせる事になった。 で、久々の再会。「ハロー」と握手をする。 オースター(←独呼/イースター)の休暇で帰郷していると 先生づてに聞いて以来だったし、その後も音信不通なので 帰郷したままドイツには戻って来ていないのだと思っていた。 「昨日ドイツに帰って来たのか?」と僕が聞くと 「昨日帰って来た」というので、「ずっとイギリス帰省?」 と聞き返すと「いや、昨日まではポーランド」と言う。 どういう事だ?と思って話をよくよく聞くと 帰郷は6日間だけで、その後、数週間は仕事の関係で 色々な国を飛び回っていて、昨日まで数日間ポーランドに 行っていたのだと言う。ちなみに来週はハンブルグらしい。 忙しい企業戦士なのだ。 スーパーで再会した彼の手にはワインがあった。 なので、僕と相棒は事前に打合せした通り 「近所のビール屋へ行かないか?」という言葉は言わず 家に招く事にする。道中、話を続けると彼は、 「もう語学学校には行かない」と言う。 時間が合わないからか?前に言ってた通り、 先生が好きではないのかもしれない。 で、今は個人レッスンを受けているようで 学校とは比べ物にならないくらい高額らしい。 「でも、紅茶とマフィンが付いてるよ」と彼は笑う。 で、「じゃぁ、ドイツ語は上達した?」と聞くと 「ナイン」と言う。ドイツ語の勉強が本当に嫌みたいだ。 そして、我が家では、お昼に僕が作った洋風肉ジャガの 残りが2.5人前くらいあったのをツマミながら、まずは ビールを呑む。最近好きな、この周辺の地ビール。 Alt Bierだ。Alt=古い、で濁った色の濃いビールだ。 最初は苦手だったが最近は逆に大好きだ。濃厚なのだ。 んで、別に日本と同じように、じゃぁ、まずはビールで。 というのはドイツにもイギリスにもナイと思うんだけど 自然と、そんな呑み方になる。クリフはすぐにでも 自分が持って来たワインを呑みたそうだったけども。 で、肉ジャガをツマンでいる間に、相棒がパスタを 作ってくれた。それを食べながらワインを呑み、談笑。 何を喋ったかなぁ〜? あ、そういえば、家に着くなり、彼は「創作はどう?」 と聞いてきた。以前来た際に僕の作品を見せて 「クレイジー!」「ストレンジー!」と連発していたのだった。 で、新作の途中を見せると「オゥ!クレイジ〜」と呆れていた。 あと、また「仕事は見つけたか?」と聞いてきた。 僕「まだ」と言い、彼「ドイツにはいつまでいる?」 僕「次の11月まで」、彼「短いなぁ。なぜ?」、 僕「ワーキングホリデービザが1年間の期限だから」 彼「そしたら帰るのか?」、僕「かもね」 彼「仕事はしないのか?」、僕「する。が3ヶ月しか働けないビザなんだ」 彼「いつからするんだ?」、僕「多分、再来月くらいから」 彼「何をするんだ?」、僕「多分、日本料理屋のウエイター」 彼「帰国したら、また先生やるのか?」 僕「うん。他は判らん。でもデザインの仕事も手に入れる」 彼「デザインはグッドジョブだ。イイね」 僕「うん。アートはバッドショブだね。笑」.........などなど 夕食が済んだあと、ワインを呑みながら、 音楽の話をした。彼がピアノをドイツにまで持って来ていると 前に聞いていたからだ。「どんな音楽が好き?」と聞いた。 すると彼は「スミス」と言った。僕が「モリッシーの?」と 聞き返すと「イエス」。ほー。しかし僕は、ほとんど知らない。 (スミスというグループ。モリッシーがボーカル。しか知らん) で、クリフは「君は?」と言い、僕はこのミュージシャンなら 知らない人はいないし、大好きな「ベック/Beck」と言った。 すると、クリフは知らなかった。しかも「don't like」らしい。笑 で、日本の音楽を聴かせてくれと言うので 今、僕がもっともストレンジ・ミュージックだと思っている ZAZEN BOYSを聴かせる。「クレイジー」の連発。 「彼は何と言っている?」と聞かれたが「諸行無常」の説明に困る。 「この世の沙汰はウソだらけ」という歌詞について 「all around world is lie.」とか適当な事を言う。ハハ。 で、友達のキャラメルンバを聴かせ「ストレェ〜インジ」 で、ムラヤマンハッタン&僕のMy!を聴かせ、絶句&苦笑させ、 ち〜とも「好き」と言うのがなく困る。笑 ので、これなら大丈夫じゃないかな?と思い、 エリオット・スミスをかける。すると「グッド ミュージック!」 「Ja!」と僕は言い、ひとまずエリオット・スミスをBGMにする。 彼もエリオット・スミスは知っていた。が、自殺した事は知らなかった。 で、ふと思った。「His song is serious song?」と いつも、質問を肯定文のまま、語尾だけ上げて、疑問文にする僕。 「彼の歌ってシリアスな歌?」と聞いたのね。そしたら「イエス」。 歌詞カードを読んだら、凄く暗かったり、重かった。 僕は、そんな歌詞だった事を忘れていたのだった。 イギリス人の彼が、意味の判る言葉で重いメッセージばかり 吐いている歌をBGMにして聴き流せるのだろうか?と思ったのだ。 もしかしたら、邪魔かも、と。 邪魔ではナイようだったが、僕が「僕は彼の歌詞の言葉の意味は 判らない。ただメロディの美しさが聴こえるだけ」と言うと 彼は「僕は、言葉とか歌が聴こえて、メロディを聴けない」 と言う。ほ〜。とか思いながら、CDはそのままにした。 で、彼に「今度、君の曲を聴かせて欲しい」と言うと 「ノー!」と言う。「人前では演奏しない」と言う。 今まで人前でやった事はナイらしく、自分1人でやるのが楽しいらしい。 「じゃ、録音してよ」と言うと「ノー」というか、苦笑してるだけ。 で、まぁ、そろそろイイ時間、クリフも相棒もオネムなようです。 だって、二人とも僕と違って朝から仕事して来たんですものね。 すると、クリフは「明日の予定はあるのか?」と言います。 僕らは「予定は何もない」と言うと 「明日、オランダの綺麗な街に一緒に行かないか?」 「OK!」という事で明日、朝クリフが車で迎えに来て 1時間半くらいで行けるオランダのある街に行く事になったのでした。 クリフは明日来る道の確認も兼ねてか、 1人で帰って行きました。(歩きです) クリフと僕は、友達になれたんだなー。 と、嬉しい僕でした。 |