「キッチン・洗濯機」

キッチン流しを買った。もう随分前になる。
引越しした家は、備え付けの暖房と
トイレとシャワーと洗面台以外、何もなかった。

ドイツでは、キッチン流しなども出る時に
持って行くのが、わりと普通らしい。

家具付きの部屋を見つけられなかった僕達は
最初、この家に越して来た時、
夏用掛布団一枚と毛布一枚しか持っていなかった。
机もベッドも冷蔵庫もなかった。勿論キッチン流しも。

越して来たのが2月末だったから、かなり寒かった。
何もナイ部屋は凄く風の通りも良かった。
2部屋ある内の小さい方の部屋で、
服やらジャンバーやらを布団にして寝ていた。
もう、辛抱たまらんので、寝袋を買った。
今後、どこかに出かけた時にも使える、と思って。

食べ物は、火も使えないので、パンばっかり食べた。
飲み物などは、使っていない、もう1部屋に置いておけば
天然の冷蔵庫だった。

しばらくして、家具屋のIKEAに行った。
しかし、できるだけ安く、物を集めたかったので
ケチって何も買わなかった。

デュッセルドルフにある日本クラブの
売ります掲示板を観にいった。
電話は使えたので、デッセルネット
というサイトで売ります、あげます掲示板をみた。
安いものを見つけたが、
送料がどうなるのか判らず調べて貰ったりした。

また、IKEAに行った。
クッションを4コ買った。
それを床に敷き、布団を作る為だ。
もちろん、その後、普通にクッションとしても使えるし。

人間の三大欲求として、食欲、性欲、睡眠欲があるが、
食はパンでも何でも、まぁ、何とかなる。最悪、外食がある。
性欲も、まぁ、なんとでもなるし、疲れていて性欲などナイ。
で、睡眠欲。結局、これが一番大事だと痛感した。

睡眠がマトモにとれないと、疲労はたまる一方で、
なんともしがたく心も辛くなってきた。一番大事な睡眠。

昼間は安い布団、ベッドを探し、街のスーパーというスーパーを
片っ端から観ていった。スーパーの売ります掲示板もみた。
家具屋も片っ端から見た。

で、とある家具屋で安い布団を見つけた。30ユーロ。
枕と布団がフタ組づつ。それを買った。
で、その布団と、前日までの、ダンボール、クッション、寝袋、
夏用掛布団、毛布、で寝床を作った。何とも幸せな眠りだった。

その後、デュッセルネットでイイベッドを見つけたが
僕らの住居から遠いので送料が恐く、迷っていたら、
歩いて40分くらいのスーパーで安いマットレスを見つけたので
それを2個買った。1個19ユーロだった。
以前、日本から相棒に送ったキャリーが大活躍をした。

その日から眠りについては、ひとまず文句なく。
次は、食だ。

IKEAで炊飯器を見つけた。12ユーロだ。
炊飯器はアジア食材屋などでも売っているが高額だそうだ。
に比べて12ユーロはかなり安いらしいので、買った。

で、ついでにデュッセルドルフにも出ていたので、
日本米と醤油も買った。(タイ米は嫌い。それならパンでいい)
日本米はタイ米と、そんなに変わらぬ値段なので、
それならば、もちろん日本米がイイ。

で、その日から始まりました。炊き込み御飯生活。
だって、我が家の調理機具は炊飯器しかナイんですから。
コンロはありません。ホットプレートもナイ。

最初は炊き込み御飯に感動した。最高だった。
しかし、度を過ぎて毎日、炊き込み御飯だと非常に辛くなった。
人間とは、なんとも贅沢な生き物である。

次は、コンロ、冷蔵庫、キッチン流し、をメッチャ探した。

コンロ、冷蔵庫をスーパーの売ります掲示板で見つけた。
一件目は高すぎた。二件目で安いのを見つけた。
ドイツ生まれの香港人の御夫婦だ。
無理を言って車で運んで貰う。
コンロ、冷蔵庫、それぞれ30ユーロだ。

冷蔵庫が来た。寒い部屋の天然の冷蔵庫はオサラバし、
なんとも文明開化の音がする電気冷蔵庫。ブ〜〜〜ん。

コンロは自分達で付けれそうもないので、
(道具もまったく持ってないし)
それから、だいぶ付けずに置いていた。
が、いつかは付けます。付けました。
ものの数分の取り付けだが、コンロ1台の値段より
高くついた。50ユーロ。わお!

しかし、炊き込み御飯生活からは解放された。
と、思ったら、鍋が無かった。買わなくては。
包丁もないぞ。と道具を揃え、料理の種類が激的に増えた。

そして、やっと冒頭のキッチン流しに辿りつく。
しかし、出会うまでは、また長かった。
なんで長いのか?安いの安いのと探しまわるから。ハハ。
キッチン流しを手に入れるまでは、トイレの洗面所の水で
やりくりした。料理の水。洗い物。なんかを。
イギリス人クリフを夕食に招待した時もトイレだった。
なので「お茶飲む?」と聞いて、水をトイレに
汲みに行ったのは、クリフ嫌だったんじゃなかろうか。

そして、キッチン。かなり遠い家具屋で安いのを見つけた。
実は見つけていたのだが、遠いので躊躇っていたのだった。
だが、もう気合い入れて、キャリー持って買いに行った。

いとも簡単に手に入った。
しかし、ココからがまだある。水道工事などである。
しかし、いっつも思うが、ドイツに来て、
この手の職人さん達だけは非常に手際も良いし、
呼んだらすぐ来てくれたりして話が早い。
大家さんなんかを通すとスッゴク時間がかかる。

そして、やっとキッチン流しの取り付け。さすがの仕事だ。
多分ゲイで、非常に愛想がよく、ゴッツイでかい男で、
なんかカワイイ声で喋る職人さん。
あなたは以前、トイレの洗面台の修理に来てくれた時も
完璧な仕事をしてくれた。今回も安心だ。
そして、キッチン流しはついた。(工賃は100ユーロを超えた)

しかし、相棒は水を汲む時についトイレの方に行ったり、
僕も洗い物をしにトイレに行きそうになる。
習慣とは何とも恐ろしいものだ。

しかし、もうキッチンにも慣れた。
人間、慣れるのも早い。順応性に優れているのだ。

で、今度は思いきって洗濯機を買った。

ずっと手洗いで、二人とも手の皮がズルむけたりしたし、
ズボンなどの大きなものは手洗いだと大変だし、
シボリも弱いせいで、洗濯物が生乾きで
臭くなったりするのが、もう嫌だったのだ。

しかも、相棒は仕事が始まって、仕事着の洗濯が
多くなったので、余計に大変になったのだ。

で、洗濯機を買った。230ユーロくらいした。
で、昨日、届いた。配送料に20ユーロ。
で、取り付けてみた。水道が水漏れしてるやんけ〜!

まただ。一体暮らし始めてどんだけ修理屋を呼んだか。
窓、ドア、暖房、洗面所、シャワー、などなど。
この家は、修理屋いわく、かなり古いらしい。

で、大家に電話してみた。
僕らの住んでいる部屋の大家は、建築設計業を営む
御夫婦の奥さんのほうなのだが、奥さんは先日
有給休暇でスキーに行き、足を骨折していて、
まだ、出歩けナイらしい。で、夫の方が来るのだが、
彼はダンディーなイデタチでカッコイイのだが、
彼に任せると非常に修理までに時間がかかる。
彼は、本業が忙しいからだろう。

そして今、彼は大変忙しいようで、来る事もできず
奥さんは、僕らから修理屋に電話して呼んでくれと言う。
良かった。その方が話が早いんだ。

明日、修理屋に電話して
もしかしたら明日中に洗濯機が使えるかもしれない。
早く洗濯したいものが一杯あるんだ。
もう、何ヶ月も洗っていないズボンとかトレーナーとか。
(そして洗濯機は付いた。洗濯は楽になった。文明万歳!)

そんな、お金のない貧乏な暮らしを僕達はしている。
そして、異常にケチなんだな、僕らは。
そして、その分、苦労してるだけなんだから自業自得なのかな。

ていうか、普通に仕事をしてれば、何でもすぐに買うのだろう。
僕が仕事をしていないのと、滞在期間が長くないので
余り設備にお金をかけたくないなー。と思ってしまう。
ずっと住むんであれば、もちろん必要な物は全て揃えるだろう。

あぁ、それにしても、
普通に暮らすってとっても大変な事だよなぁ。