「音楽ライブ」

ドイツに来てから、いくつかのライブを観た。

一番最初はHarald sack Ziegler のソロライブ。
Sack und Blumm の片割れとして、
日本でも知ってる人は知っている音楽家。
Ko"ln/ケルンに在住の音楽家。

その当時住んでいたザールラント州の
鉄工所跡地をアートセンターにしたみたいな所で
ゲームを題材にした展覧会が行われていた。
それに合わせてのスペシャルライブだった。

観客は非常に少なく、30人弱。
会場に並べられた椅子で十分に足りた。

小さなステージには彼の楽器達が並んでいた。
フレンチホルン、彼のメイン楽器。
あとは、音の出る玩具達。子供用のアコーディオン。
ボタンを押すと歌うバービィ人形。などなど。

この玩具達が小さなチープなエレクトロニクスで、
それが、ゲームとの繋がりがあるという事で
彼のライブがこの展覧会に盛り込まれたのだろう。

まず、玩具の音や、声などで、「ブゥ」と
音を出す、と、それが、ループされてリズムになる。
そして、さらに音を「チチ」「ドゥドゥン」と
重ねてリズムループを完成させ、その上に
彼の歌が乗る。そんなライブ。

彼の歌は、犬を飼うと税金がかかる。とか
(ドイツでは本当に税金がかかるらしいのです)
バービィーがとっても好きだ。とか、
洗濯の時にズボンのポケットに紙切れが入っていて、
やってしまったー。もう二度としない。とか、
そんな歌詞だったらしい。たわいもない歌詞。

玩具と声で出来たリズムはかなり変テコで
歌はヘタっぴいで、でも、そこに哀愁漂うホルンが
乗っかりイイ感じの曲になる。
僕も相棒も大好きなライブで大満足した。

しかし、隣の席に座る御夫婦のおばさんのほうは
終止しかめっつら、で、首を横に振りながら
呆れまくっていた。で、ライブが終わったら
とっとと帰ってしまった。旦那さんは終止笑っていた。

その次に観たライブはStaubgoldというレーベルの
ツアーライブ。Sunというバンドと、名前は忘れたが
ソロのおっさんのライブを観た。
Ko"lnのGeba"ude 9で。ゲボイデとは場所という意味。
じゃ、なくって、ゲボイデとは建物って意味でした。
("はウムラウト表記。本来は一つ前のoとaの上に付く)

ソロのおっさんは、ホーミー、口琴、なども使い
基本はコンピュータによるエレクトロニカなライブ。
前座扱いという事もあってか、物凄く燃えていた。
そして、燃えている分、観客にも受けていた。

ライブ会場には相棒の好きなドイツのTVドラマ
「フェアボーテネリーベ」の出演者の俳優と女優が
来ていた。ソロのおっさんの友人らしい。
そして、この俳優と女優はドラマの中では
兄妹役らしいのだが、プライベートでは恋人のようだ。
相棒は彼等がいる事に、ソワソワしていた。

ちなみに相棒は、そのドラマ観たさにTVを買おうか
本気で迷っている。それぐらい観たいドラマなのだ。

で、メインアクトのSunの登場。
当日、Ko"lnのレコード屋A-MUSIKで試聴した
Sunのアルバムはとても良かった。なので観に来た。
だが、ライブはとっても良くなかった。

ステージには、左からハープ&コーラスの女性、
ボーカル&A&Eギターの男性、ドラムの男性、
スチールギター&エレキマンドリンの男性、
エレクトロニクス&キーボードの男性の5人。
ボーカル&AEギターとドラムの男性2人でSunらしい。
あとの人達はライブサポートメンバーだ。
そして、結論から言うとボーカルが良く無い。

僕はライブを観ている時から、スチールギターの人と
エレクトロニクスの人とハープの人でバンドを
組んだら面白い音楽を聴かせてくれそうに思う。
と言っていた。という事はステージからSunだけ
引きずり下ろせば良かったという事だ。
Sunのライブなのに。

スチールギターの人とエレクトロニクスの人の
サポートは素晴らしかった。彼等がいなかったら
本当に最悪のライブになっていたように思う。
ハープの人も全然まずくは無かった。

ドラムもそんなにまずくは無かった。かもしれないが
物凄く遠慮の固まりみたいな演奏だった。
気持ち良さそうに歌うボーカルはダサク、
ドラマーは遠慮がちで、サポートメンバーが
気を効かせてくれて何とか聴けるものになっていた。
しかし、そのサポートメンバーも自分のバンドでナイ
という理由からか、やっぱり遠慮がちなのである。

こんなハジケない、遠慮の塊のスッキリしない
消化不良みたいなライブ、面白いわけがない。
正直残念だった。それだけ。

その会場で、相棒の旧友のKo"ln在住韓国人の
ジュンさんとバッタリ出会い、ライブ終了後、
会場からすぐの彼女のアトリエ兼住居を見せてもらう。

彼女は美術の勉強をして、絵を描いたりしていたらしいが
今は実験音楽の制作が活動の中心になっているらしい。
そして、今作っている曲を聴かせてもらう。
Sunより全然イイ!

エモーショナルで気持ちがたっぷり込められていて
少し重い悲しい気持ちが多めな気がするが、
なんとなく母国から離れて暮らす人の心境みたいなものが
入っているように思い、共感できた。綺麗な音楽だった。

彼女は今日観たレーベルに自分の曲を送ってあるらしい。
そして、僕も日本でやっていたMy!というグループのCDを
レーベルオーナーに渡した。どんな顔して聴いてるかなぁ。

そして、その後、観たライブはBob Log。。
ボブログ三世という人のライブ。Dusseldolfにて。
7ユーロとかなり安くで観れた。1000円くらいだな。

この人は、電話の受話器が正面に引っ付けられた
パイロット用のヘルメットを被っていて、で、
セミアコースティックギターをスライド多用で弾きながら、
右足下にはドラムのバスドラ(キック)、
左足下にはシンバルがセッティングされていて、
それを全部1人で同時に演奏し、歌う。

僕は無条件に被り物のミュージシャンが大好きなので
この人も観たかったのだ。

で、結論。とってもバカ。素晴らしかった。
まだ観た事のナイ人がいたら、一度観とくとイイ。
と言うだろう。で、一度観た人と話すなら、バカだよねー
ま、一回観たら、もうお腹一杯で二回目観る気はしないけど。
と話すだろう。いや、本当に良かったんですよ。

音楽としては、ブルーズとかカントリーとかのぶっ壊れたの。
ただ難点は全部の曲がほとんど同じに聴こえること。
でも、ライブパフォーマンスとしては最高に素晴らしかった。
脳みその中がトロトロに、もうどうでも良くなった。
ストレス発散には、もってこいのライブだ。
悶々とした人はボブログ三世を観るとイイと思う。

そして、その次に観たのが、伝説のシンガーソングライター
と銘打たれていた、ジョナサン・リッチマン。
すごく観たかった人だ。たまたまフリーペーパーに
名前を発見して、絶対に観る!と心に誓っていたのだ。
本当に、伝説の、と付けてオカシクない人だ。
(確か、この日、Ko"lnではマシュー・ハーバートビックバンド
 のライブがあったのだが、ジョナサンを選んだのだった)

当日、僕は語学学校をサボッた。そして、Dusseldolfへ。
相棒はジョナサン・リッチマンを聴いた事がなかった。
ので、試聴しまくれるCD屋に寄り、CDを探すが売り切れ。
とにかくライブハウスに向かう。

路面電車で、おじいさんと言っていいぐらいの
初老の男性と一緒に降りる。まさか、彼もジョナサンの
ライブを観に行くのだとは思わなかった。
しかしライブハウスに集まった人々の年齢層は高かった。

ジョナサンはガットギターをストラップなしで
手で持って弾く。添えられた右足の高さでギターの
どのポジションを弾くのかを助けつつ。
そして、頻繁にギターを床に置いて、踊りまくる。
楽しそうだ。そして、楽しい。

ジョナサンの相棒はドラムのトミー。
ジィっと、ジョナサンの顔をにらむように見つめている。
そして、絶妙なドラミングでジョナサンをサポートする。
このドラムがある事でジョナサンは自由に
ハジける事ができるんだろうなぁ、と思う。

ジョナサンは、かなり歳をとっていた。
僕が今まで観て来た写真なんかとは別人に老けていた。
でも、笑うと凄く若々しい。写真と同じ若さに変わる。

最初、ジョナサンは、ちっとも笑わず、
少しシンドそうに見えるくらいだった。歳かなァ〜。
と、思った。が、会場のファンの盛上がりに次第に
ジョナサンも調子が出てくる。踊る踊る。

すると、随所に笑みもこぼれ、非常にフランクで
余裕に満ち溢れて、少ない楽器、少ない音、それらで
最高にエンターテインメントなショウを観せてくれる。

ボーカルは、自分がマイクから遠ざかっていき
声の余韻を作る。ギターもマイクで音を拾っているので
同じ手法で音の強弱も作る。そして、マイクから遠く
離れて、マイクレスで時々歌ったりして、観客が自然と
静かに耳を傾ける。そんな強弱、ユルサと緊張感が
気持ちいいライブ。間(ま)も気持ちいい。
無駄なものが何もない。

途中、10分の休憩。ライブハウスで休憩というのは
初めてだ。これも、いい間(ま)だ。
休憩中は冷房を入れてくれる。ジョナサンは冷房が
嫌いなようだ。なのでライブ中は冷房はなし。暑い。

楽しい、そして、哀しい、歌にギター。
ジョナサンの哀し気な顔や、最高にカワイイ笑顔
なんかも音楽に色を添える。そして楽し気に踊る彼。

楽しいのか、哀しいのか、もう何なのか判んない。
でも、幸せで、気持ちいいんだよなぁ。
そんな至福のライブだった。

ジョナサンが至福にしてくれたので
そんなに気にはならなかったし、今までドイツで
観たライブの中ではマシだったのだが、
ドイツの人達はライブ中でもオシャベリを一杯する。
ずーと喋っていたりする。なんで?って感じ。

そして、このライブ会場で日本語ペラペラの
ドイツ人男性、エドガーと知合う事になる。
その翌日も会ったり、その後日にも我が家に来たり
といった風に交流が続く。それは、また別に書こう。

そして、今後観るライブの予定としては
5月中旬にレニングラードカウボーイズを観る。
アキ・カウリスマキ監督の映画で有名になった彼等。
まだまだ現役らしい。被り物系が好きだから観たい。

あと、7月7日にトータスを観る。
もう、これは前売りチケットを買った。14ユーロ。
安い。日本でこの値段では観れないよなぁ。

あ、あと、5月の末に、
ジミ・テナーのライブがKo"lnであるらしい。
今もっとも興味のあるミュージシャンなので、
絶対に観たいと思っている。

お金は全然ナイんだけど、
ライブは観れるなら、できるだけ観たいと思う。
だって、日本より全然安いんだもん。