「大竹伸朗」

大竹伸朗さんって知ってますか?
有名な画家です。

大学時代、
僕は彼の作品がずっと大嫌いでした。

親友は彼の作品が大好きで、
僕には、まったく理解できませんでした。

しかし、そうこうしてる内に
大学卒業後、好きな作品も現れました。
というか、僕に変化があったのかもしれません。
といっても、大半は嫌いなのですが。

しかし、まぁ、
全ての作品が大好きな美術家というのは
まず、今の所いないのも事実です。

興味を持ち始め、彼の著作にも手を伸ばし、
読み、創作に対する姿勢を知るにつれ、
いつの間にか、僕は、彼を尊敬していました。
しかし、やはり大半の作品は嫌いです。

そして、今、ここドイツに
彼の著作「既にそこにあるもの」が、あります。

この本は、もう読んではいけない×2
と思いつつ、何度も読んでしまっています。

何故読んではいけないのか?
創作の邪魔になってしまうからです。

そして、何故読んでしまうのか?
創作に勇気を与えてくれるからです。

いい感じの装丁のこの本ですが、
カバーの端は傷み、破れ、
更に風合いを、増してイイ感じ。

この本は作品集ではなく、文字のみです。

僕は彼の作品が観れる本は
持って来ませんでしたが、
彼の言葉は持ってきたわけです。

しかし、大半の作品は大嫌い、と言いつつも
大好きな作品は、他の作家の作品よりも
強く好きだったりしますし、
何よりも、全体として大好きな美術家です。

昔、新宿に彼の個展を観に行き、残念ながら
その日はタイムオーバーで観る事が出来ず、
窓の外から眺めていたら、たまたま出て来た
彼に、サインと握手をして頂いた事もある(笑)。

結局、好きや、嫌いが強烈なモノというのは
影響力もあり、気になって仕方ないのです。
無視できない、という感じでしょうか。

その中間、好きでも嫌いでもないモノというのは
その存在に気付く事すら少ない気がする。

大好きなモノ、大嫌いなモノ、
見たいモノ、見たくないモノ、
興味のあるモノ、嫌悪するぐらいのモノ、
面白いモノ、理解できないモノ、
無意識的に何やら異臭の漂うモノ、
異常に自己主張のなさすぎるモノ。

それらは、多く、僕を魅了します。
頭では大嫌いだけど、体がもう反応しちゃって
どうしようもナイ、とかもあります。

気持ち悪くて、嫌悪して、
ヘドが出そうになるくらい、見たくないのに、
何度も見てしまう。そんなモノもあります。

わけ判んないのに、なんかスゲエ強烈に
判んない主張や臭いを投げかけてくるモノにも
思わず見入らずにはいられないモノもあります。

とにかく、自分の人生において
強く存在してくるモノってのがあるわけです。

そして、興味がなく、見えなかったモノが
時間の流れと、自分の流れの中で、価値を持って、
ふと、目の前に現れる事もあります。

それは、自分の興味の移り変わりでもありますが、
タイミングであり、一期一会というやつです。

出会い、というのは素晴らしく、
そして、とても貴重なモノと日々強く思います。

そして、今日、数年目の付合いになる
「既にそこにあるもの」に
白い栞(しおり)がある事に初めて気付いた。

だから、どうした?って話なんですけどね。