「フェスティバル」

タンデムとして知合ったアンドレアス、
もう呼び捨てになった。
相棒が呼び捨てで呼び合おうと
提案したからだ。
しかし、アンドレアスは、やっぱり、
さん付けで呼んでいたな、たしか。
ドイツ人らしくないなぁ。

んで、彼と、とあるフェスティバルに
行った。Dortmundという街で行われた
Juicy Beatsというフェスティバル。

元々そのフェスには1人で行くつもりだった。
イベントは昼過ぎからやっていて、
土曜日だったので、相棒は仕事で行けない
と思っていたからだ。で、1人で行くのも
イイ経験だと思っていた。

が、結局はアンドレアス情報で
夕方行っても、僕達の観たいミュージシャン
は観れるという事を知り、アンドレアスが
一緒に行こうよ、と誘ってくれたので
相棒も行く事にし、3人で観に行った。

フェスの前売りは12EUROだった。安い。
アンドレアスがチケット売り場で買ってくれた。
こっちではチケット売り場で買うと
手数料が少しかかる。日本もそうだっけ?
しかし、安い。しかも、そのチケットには
自分の最寄り駅から、会場までの電車にも
往復で乗れる。電車代こみのチケットなのだ。
凄い。そんなの日本にあるか?

で、僕達は、そのチケットを受取る目的と、
映画を一緒に観る為に、フェスの前日、
アンドレアスの住むデュッセルドルフに出た。

あと、ワイン祭りもやっていたので
それにも行った。そして、田舎町から
出店していた屋台でワインを買おうとした。
そしたらば、1人のオッサンが僕らの
呼び掛けに気付いたが、ワインの事を
少し聞くと、ちょっと待ってと言ったまま
他の客の対応しかしなくなった。

僕らの事は無視。他の2人の従業員、
ババアとオッサンは目を一度も合わせない。
最悪である。この事を後で、アンドレアスに
話したら、それは何か理由があったんだ。
という。ドイツ人の客からサバイタほうが
サクサクと注文が取れるから、儲けられると
思ったのかもしれない。とか、いう。

それでも、そりゃないだろー。

とにかく田舎モンのドイツ人は尚更
差別がヒドイ。保守的だからだ。
ま、日本も一緒だわね。というか、人にもよる。
とにかく、不快極まりなかった。

いつも感じる事。僕は外人なんだよな。
それに尽きる。しかし、めげずに何とか
ワインを手にいれ、それが美味しかったので
少し機嫌はなおる。だが、こういう場合、
僕と相棒の喧嘩が始まる。僕が怒りすぎだからだ。

僕は、まだまだ、ドイツが凄い嫌いだ。

さて、アンドレアスと会い、映画に行く。
観た映画は「座頭市」。面白かった。
しかし、残念な事にドイツ語吹替え(笑)。
吹き替えるな〜!ドイツ人!(笑)
あぁ、吹替えは日本でもドイツでも嫌いだ。
しかし「座頭市」は面白かった。

セリフが差程多くないし、全体の流れは
セリフなしでも理解できた。というか、
大抵の映画はセリフなしでも理解できる。
もう、そう思うようになった。
いや、正確に言うと言葉の理解なし、セリフ
は何語であってもイイからあって欲しい。

にしても、北野武は凄いな。凄いよ。
なんか、芸人が芸術家になって、
片岡鶴太郎みたいに、ヤな感じに
なっちゃうってのがあるけども、
北野武もその1人だとは思うのだけど
でも、凄かったから、文句は言えない。

あぁ、片岡鶴太郎、鶴ちゃん時代に
戻ってほしいなぁ〜。もっかい太ってほしい。
マッチの物真似したり、おでん食べてほしいな。

さて、映画の日、電車で帰ろうと思ったら、
30分くらい遅れている。もう夜中0時過ぎ。
んで、待ってたら、そのまま、その電車は
なくなった。もう来ませんから。というわけ。
なんてこった。他のルートを駆使して帰宅する。
随分と遅くなってしまった。ドイツはバカだ。
こんな事ばっかりある。

んで、その翌日、頑張ってフェスに向かう。
アンドレアスの乗る電車にEssenで乗り込む。
無事会い、フェス会場に到着。

入り口の列に並ぶ。すると、
入り口に「飲食物の持ち込み禁止」と
書いてあるらしい。わぉ!ワインとか
チーズとかブドウとか一杯持って来てるよ。
だって、公園でのフェスだったので
ピクニック気分もあったのだ。

しかし、僕の思考はフル回転し(笑)
入り口ゲートの内側のチケットもぎりの
横にそ知らぬ顔でリュック達を置いた。
チケットを見せる時は手ぶらだ。

しかし、その後、そのリュック達を
素早くとるのが難しい。持ち物検査をする
セキュリティーの大男達がウヨウヨいる。
その男達の目を盗んでリュックをゲット。

その時、相棒が僕の行動を見て「うまい」
と言ったので、アンドレアスは「うまい」
という日本語の使い方について、
考えを巡らせていたようだ。

アンドレアスは、入り口での僕の判断を
「クール」だと言う。それと「うまい」は
似ていますか?と聞かれる。似てるのかも
しれないが、あのくらいのズルは誰でも
トッサに考え付くと思うんだけどもね。

「うまい」「上手」「クール」「おいしい」
色々な言葉の似た意味合い、使い方、
そんなのをアンドレアスに教える。
彼と会っていても、彼は日本語を喋るし
僕は全然ドイツ語の勉強をしないけど、
彼は日本語の勉強をこまめにやっている。

この日、ライブを観るというよりは
芝生に寝転び、ワインを飲み、チーズを食べ
遠くから音楽が聴こえるといった感じだった。

そこは芝生の大きな会場でその一画に小さな
ライブステージがある。んで、芝生内には料理屋
とか、ビール屋とかが点在している。んで、客は
ほとんど寝そべって、ステージを観るわけでも
なく、お喋りしている。フリスビーをやってる人
もいた。客の数はとても多いんだけど、ステージ
の前に集まって人は、この会場全体の極わずか。

大きな公園内に一杯会場があったのだが、僕は
一つの会場しか観なかった。その会場では、
以前Koelnで観たJimi Tenorを再度観れた。
それだけが僕の目的だったのだ(相棒も)。

で、芝生に寝転びながら、時に相棒は熟睡し、
僕はアンドレアスに日本語の質問を一杯受けた。
「しぶい」「かっこいい」「かわいい」
「クール」「きれい」「すてき」「おもしろい」
そんな日本語を、様々な音楽を例に出しながら、
できるだけ分かりやすく説明した。この日、
彼は音楽の形容について質問してきたわけだ。

で、音楽の場合の「しぶい」はこういうモノ
だけど、服装になると少し違うかもしれない
とか、「かわいい」にも色々ある。男の人にも
「かわいい」という形容はする。など音楽以外
での使用例なども説明していく。

様々な音楽を例に出して説明したのが
彼にとっては理解しやすかったようで、
とても喜んでくれた。彼と音楽の趣味が
多少重なっているというのが大きかった。
今まで彼が知合った日本人はJ-POP専門
みたいな人が多かったようだ。

んで、アンドレアスが色々な会場に行きたいかも
しれないところを僕達がその一つの会場に居座った
事で、彼は自分の好きな音楽を聴けなかったようだ。

というか、こう、ワインやら、チーズやらを
広げてしまっては、なかなか移動もままならない。
結局、その会場に居座ってしまった。

彼はKompaktというレーベルの音楽が
好きらしく、僕達はそのレーベルを知らなかった。
だけど、日本でもとっても有名なレーベルらしい。
後日、会った日本人からも、その名前を聞いた。

僕達はアンドレアスには悪いけど、Jimi Tenor
だけを楽しんだ。アンドレアスは2曲程聴いたら
別の会場を観て来ますと行ってしまった。Jimiの
音楽が好きじゃなかったらしい。僕と相棒は大好き。
2人とも踊り狂った。最高であった。

まるで、自分勝手な僕達の行動のほうがドイツ人的
である(笑)。アンドレアスのほうが、なんぼか
良心的な人かもな。図々しくなっちゃったかな僕達。

ライブ中、酔っぱらった若者がやってきて
僕達の前でうっとうしいので、脇腹をつっ突いたり
してやったら、英語で話し掛けてきて、ライブ終演後
も、その場で会話になった。んが、やっぱ僕は英語も
さっぱりなので、主に相棒が片言の英語で対応した。
ドイツ語を喋ってくれたら相棒は普通に対応できる
のに、彼は何故か英語一点張り。ドイツ人なのに。

そこにアンドレアスも戻ってきて、何故か
ドイツ人達が英語で喋っている。なんとなく
聞き取った限りでは英語を勉強している若者らしい。

んで、なにげにステージ上を観ると、Jimiが
片付けをしている。なんかライブの時と比べると
一気に花がなくなった風貌。Jimiだけに地味。
あぁ、オヤジになりました。僕。

んで、速攻、相棒に知らせ、一緒にサインを
貰いに行きます!先日のライブで買ったJimiの新譜を
持参していたのです〜。こんな事もあろうかと。
サイン頂いちゃいました。んで、握手も〜!
あぁ、嬉しい。ただのファンだな。

僕が過去にサインを貰った事のある人達。年代順。

1.横尾忠則 大学に講演に来た時
2.大竹伸朗 新宿で彼の個展会場の外で
3.ギターウルフ Dortmundでライブ後、楽屋で
4.Jimi Tenor 上記

の4名だな。サイン貰ってどうすんの?
と思ったもんだが、とりあえず嬉しい。

そして、またまた、アンドレアスには悪いけど、
朝4時までやっているイベント会場を後にして
帰宅。しかし、これまた昨日のように電車の問題。
というのも、ドイツでは、タイムテーブルを調べる
機械があり、それで乗換えなどを調べられるという
便利なものです。たまにはそういう便利なもんもある。

で、その機械、愛用しておるわけですが、色々な
ルートでの目的地への行き方が出るようで、いつもの
行動範囲とは違う今回、ちょっと意外なルートが
出ており、しかも、その事に気付かずに、ちょっと
ばかり遠回りなルートの電車に乗っちゃった。
んで、30分くらい余計に電車に乗るハメに。

今回は自分達の落ち度なので、トホホなのだが
まいったまいった。んだが、アンドレアスと
更に色々と話し、日本人の倫理とか考え方とか
そういう事も少し話す。考えさせられた。

彼の語学学校の生徒さんで過去にお金を
払わずにトンズラした日本人男性がいるらしく
それは何故なのだろう?と聞かれたが、そりゃぁ
そいつは悪いヤツで、日本人みんなが、そんな
感じではナイわけでね。ただ金にガメつい日本人
ってのはいるし、正義とかプライドとか倫理とか
が欠けた日本人が残念ながらいる。と話す。

ドイツ人のプライドは高く、ズルをするのが嫌いだ。
なので、理由が判らないわけ。
しかも、それ以前、その男性は非常にイイ人だった
そうで、余計によく判らないというわけだ。
詐欺師みたいなもんだね。そうなると。計画的だとね。

で、ドイツ人はプライドが高いくせに、言い訳は
物凄いするんだけどね(笑)。道理にあってない
ような言い訳を平気でよく言うからね。ま、それは
別の話だけど。プライドがあるから悪事は働かない。
けども、自分にとって正しい論理で作られた言い訳は
真っ当なものだと思ってるんだね。ドイツ人って。
これはこれで変な話なんだけど。迷惑もかけられるし。

僕がドイツ人にイヤな思いをさせられたら、
ドイツ人に対しての不信感とかがつのるわけだが、
それは逆の立場でも同じってもんだわな。
1人の日本人のせいで、日本人に対してのイメージ
ってのが作られたり、そういう事もいっぱいある。

とにかく民族間の差異というのは非常にある。
個人間でも勿論あるが、民族、国、そういう垣根は
とても高い。相手の気持ちになるのは難しい。
先日、一緒に観た「座頭市」でも共通の感情も
あれば、全く違うのもありそうだった。

そういう考え方はしない。そう、お互いに思う
部分があるわけ。で、アンドレアスも「座頭市」を
観て、大変日本の事が良く判ったと言っていた。
彼は日本に留学していた事もあるので、日本を体感
して来てはいるのだが、理解できない事というのが
まだまだ沢山あるようだ。

日本留学経験のある日本語のできるドイツ人の友人、
3人ほど、そういう人がいるが、みんなそうみたい。
そりゃぁ、そうだよね。僕達、日本人がドイツ人の
本当のところを理解するのも難しいし、頭では
判るけど、それちょっと違うんじゃねーの、とかも
あるしね。なかなか習慣というのは根強いのです。

また、長々と書いたが、んで、何かって言うと
Jimi Tenorのライブ最高!観に行って良かった。
しかも握手して貰ったんだぜ〜(笑)。